臨床工学技士は、高度な医療用工学機器の操作・管理をおこなう、医学と工学のプロフェッショナル。
医師の指示のもとで血液浄化装置や人工呼吸器、人工心肺装置などの生命維持管理装置を操作したり、院内にある医療機器が安全に正しく使用できるように保守点検をおこなったりする、医療技術者です。
医療技術の進歩にともない、ますます高度かつ複雑になっていく医療機器。臨床工学技士はさまざまな医療機器に関する知識を持ち、スムーズに治療や検査がおこなえるよう、専門知識や技術を発揮しています。
臨床工学技士の具体的な業務内容の一部を、ご紹介していきます。
●呼吸治療業務
肺の機能が働かなくなり自力で呼吸ができなくなった患者さんに、人工呼吸器を装着します。装着の際は、安全に装置が使用されているか、装置に不具合がないかなどを確認します。そのほかメンテナンスや管理業務をおこなうのも、臨床工学技士の仕事です。
●人工心肺業務
心臓手術の際に、心臓や肺に代わる働きをする人工心肺装置を操作し、患者さんの状態を管理します。機器の操作だけでなく、使用前の点検をおこなうのも臨床工学技士の仕事です。
●血液浄化業務
腎臓や肝臓などの病気により、体内にたまった老廃物を排泄したり代謝したりできなくなった場合に、血液浄化装置を使用します。さまざまな血液浄化療法がある中で臨床工学技士は、穿刺(中空の針を体に刺して内部の液体を吸い取る)や、人工透析装置の操作をおこないます。
●心臓血管カテーテル業務
心臓や血管に細い管(カテーテル)を入れて圧を計ったり、造影をおこなったりする検査方法です。このような検査により、手術に適応できるかを判断し術式を決定します。検査一連を記録するためのコンピュータ操作や、検査室内にある装置の操作を行うのも、臨床工学技士の役目です。
さらに最近ではアブレーション治療という、足の付け根などの太い血管からカテーテルを入れ、心臓内部の不整脈の原因となっている部分を高周波電流で焼き切る治療方法においても、臨床工学技士の重要性が高まっています。
臨床工学技士は1988年からスタートした比較的新しい資格であるため、資格保有者の人数が少なく、賃金に関する公的な統計がありません。しかしながら一般的な病院では、診療放射線技師とおおむね同等の収入となっているようです。
厚生労働省による平成25年賃金構造基本統計調査の結果によれば、診療放射線技師の平均月収は約36万円で、平均年収は約530万円となっています。
臨床工学技士は比較的新しい資格で、平均年齢が低いことを考慮すると、給与の平均値は診療放射線技師よりも、少だけ安いかもしれません。
近年やチャットボットや自動音声会話技術の発展により、AIが自動的に宿泊先を手配したり、簡単な電話の対応ができるようになりました。将来的には、これらの技術の発展により、大きな影響を受けると思われます。
臨床工学技士の主な職場は病院とクリニックです。病院では手術室や透析室、集中治療室など、複雑な医療機器を取り扱う部ポジションに配属されるのが、一般的となっています。
病院で働く場合には、どのように採用されるかで働き方が変わってきます。手術や救急救命への立ち会いを前提にした採用であれば、緊急事態に対応できるよう勤務時間以外の待機が含まれていたり、勤務時間が交替制になっていたりと、働く時間が不規則になりがちです。
ですが雇用形態をアルバイトやパート、契約職員という形にすれば、それなりに時間の融通をきかせながら、働くことができるようです。
また臨床工学技士の中には、医療機器メーカーで働く人もいます。臨床工学技士が医療機器メーカーで働く場合、「アプリケーションスペシャリスト」と呼ばれるポジションへ就くことになります。アプリケーションスペシャリストとは、医療現場での経験や医療知識を生かして、営業をサポートする仕事です。
このようにいろいろな働き方があるため、自分に合った働き方を見つけることができるのではないでしょうか。
臨床工学技士の将来性については、明るいとする見方が多いようです。
近年ではAIの発達が目覚ましく、そのため医療機器においても人の力を必要とする場面は減っていくと予想されています。
しかしながら生体に使用する医療機器を完全に無人化するのは困難なようで、今後も臨床工学技士がまったく不要になることはないでしょう。
医療技術が目覚ましく進歩している現代。技士にしかできない業務に力を入れていくことで、今後もますます活躍が期待される職業といえます。
臨床工学技士になるには年1回おこなわれる、臨床工学技士の国家試験に合格しなければなりません。合格率は70~85%と比較的高いため、しっかり学んで受験に臨めば、そこまで難しい試験ではないようです。
臨床工学技士の国家試験の受験資格を得るには、臨床工学技士の養成課程がある大学(4年制)か短大・専門学校(3年制)に進学し、厚生労働省の定めるカリキュラムを修了する必要があります。
カリキュラムを学ぶにあたり、まずは3年制の専門学校・短大で学ぶか、4年制の大学で学ぶかを決めることになります。どちらを選択するかの基準としては、早く資格を取得したい人や学費をできるだけ安く抑えたい人は3年制の専門学校・短大を選び、余裕を持ってじっくりと学びたい人やより広い専門知識を習得したい人は、4年制の大学を選ぶとよいでしょう。
ただ最近の傾向としては4年制の大学に進み、臨床工学技士を目指す人が多いようです。
キャリアステップに関しては、人それぞれやり方がありますが、ここでは病院に勤務した際の、一般的なキャリアステップをご紹介します。
●1年目
・機器管理業務・血液浄化業務・呼吸療法業務・補助循環業務など、基本的な業務の基礎知識や技術の習得。
・各種業務の勉強会
●2~3年目
・2年目からは宿当直業務を開始。
・対応業務のレベルアップをはかる。
・人工心肺業務・手術室業務・植込みデバイス業務などの専門的業務スキルの習得。
・各種医療機器メンテナンス講習
・3学会呼吸療法認定士・透析技術認定士・各種認定臨床工学技士を目指す。
●4年目
・対応業務のさらなるレベルアップをはかる。
・後輩職員に対する各種業務の教育。
・植込みデバイス認定技士を目指す。
●5年目以降
・リーダーとしての役割の実践。
・より質の高い専門分野での業務対応と後輩職員への指導や育成。
・体外循環技術認定士を目指す。
・各種専門臨床工学技士を目指す。